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Talkdeskでどうやって130%のネットリテンションを実現したカスタマサクセスチームを作ったか?

SaaStr(SaaS経営者が集まる世界最大級のSaaSカンファレンス)のSVP of Client Services @ Talkdeskのトークを聞いたので、理解整理もかねて日本語で雑多にまとめる。

トークの動画とTrasncriptは下記。

www.saastr.com

事前知識

Talkdeskは2011年に創業したコンタクトセンターのクラウドサービス。初期は、SMB(従業員数10~500名の中小企業)向けソリューション。 ここでのトークは、2016年ごろから顧客層をSMB向けからエンタープライズ向けへとシフトして行った際のカスタマサクセスチームでの学びを共有している。

トークをしているGillian HeltaiさんはSVP of Client Servicesなので、顧客対応系のSenior VP (日本でいうと、ある組織や部門のトップ。この人の上には経営層メンバしかいない感じのポジション。)

ネットリテンション(Net Retention Rate)とは顧客の売上継続率を意味している。つまり、MRRが100万円の顧客(月額100万円の顧客)が、ネットリテンションが130%ということは、解約やダウングレードなど何もない場合は翌年にはMRRは130万円になっているという状態を指す。 つまりそれだけ、顧客がアップグレードしてくれるようなサービスになっているということ。

ネットリテンションを上げるために基本的に必要な要素

  1. アップセルをするための価格設定がされていること

    • そもそもアップセルするための材料がないとアップセルできない
  2. 追加購入までのプロセスが簡潔であること、またCSM (カスタマサクセスマネージャ) が営業と役割が分離されていること

    • CSMが営業として動いてしまっていると、顧客との関係構築上よくない。
  3. チャーンがしにくくなる状態にできていること

    • 顧客満足度が高い状態や、サービスの価値が顧客のビジネスに影響を与えていたり、他サービスへの移行がしにくいこと

上記のような背景としては、Talkdeskの顧客がSMBからエンテープライズの顧客までいるため、カスタマサクセスチームもが非常に幅広いユーザペルソナに対応する必要があるため。

良いカスタマーサクセスチームを作るには

  1. 採用

    • 絶対に必要な少数の基準(3つよなら多すぎ)を作り、採用プロセスを効率化する。これにより採用にではなく採用した人のランプアッププロセスの強化やプレイブックを作成できるようにする
  2. 組織作り

    • カスタマサクセスチームを中心に組織を構成すること
    • 2年前Talkdeskには3つのClient Service Teamがあった

      • プロフェッショナルサービスチーム: サービス導入のインプリ支援など
      • カスタマサクセスチーム: 顧客との関係性構築
      • テクニカルサポートチーム: 問い合わせ対応

上記に加え、エンタープライズな顧客へのシフトによって、さらに2つの役割を追加した。

  • テクニカルアカウントマネージャ: CSMよりもより戦略的なアカウントを担当し、技術的なプロジェクトを顧客と推進していく
  • プロアクティブサポートチーム: 顧客データを分析し、顧客の問題を検知し、未然に防ぐ

    • そして、業界別、会社規模別、顧客の導入フェーズなどに応じたセグメント化を行い、それぞれに応じた取り組みを各チームで実施できるようにすること。Talkdeskの取り組みの一つとして、Sales Engineerのチームをクライアントサービスチームの中に組み込んでいる。これにより、売りっぱなしといったことを防ぎ、見込み顧客へのセールスサイクルから顧客の成功に向けて良い信頼関係などを生んでいる。これらのチームが共通の目標設定(ネットリテンションやNPSなど)を持っていることで同じ目線を行動することができる。
  • Accountability(説明責任)の文化を作ること

    • 顧客との間で問題が発生した時に、それに対して紳士に向き合い解決することで良い関係を気づくこと
    • 顧客とサービスどの間できちんと関係性を作ること(フィードバックをするなど)
      • TalkdeskではSFDCにProductGapオブジェクトを作り、そこに顧客の期待と実際のギャップ理由などを入力している。さらに、その更新がSlackに通知されるので、エンジニアやプロダクトと会話することができる
      • また、チャーンした場合には必ず事後分析を行い、Salesforceのアカウントページに入力する。またマネジメント層がちゃんとそれを元にレビューをして、今後の改善を行うようにしている
    • インセンティブとして、既存顧客を維持することに対してボーナスプランを設計する。

ネットリテンション向上に役立つそのほかのこと

  1. ビデオ会議は必ずビデオ表示して、録画をする
  2. 顧客との会議の記録を共有する。特にQBR(四半期レビュー)などの際
  3. 戦略的な顧客に対してきちんと人員配置すること。TalkdeskではCEOがアカウントチームの一人として顧客とのミーティングに参加し、顧客と対話するようにしている
  4. CEOが顧客のニーズを知っているようにすること
  5. 顧客マーケティングに投資する。ほかの顧客からリファレンス(例えば、取り組みAをした時に、XXがYY%上がった顧客とかいるか?とか聞かれた時に顧客事例をぱぱっとだせるような感じ)ができるようにしている。全体の顧客数から見た時に35%がリファレンスとして使えるようになっている。

感想

総じて分かりみが深かった。 こういったところを今年来年と自社では改善していきたいなあと思う次第。

とはいえ、サポートとしてどうやるか、というよりかはサポートを超えてどうチームを作っていくかということを考えて行かないといけないことの方がおおいので、もう少しこういった取り組みをいろんなチームと一緒に日本・グローバルで回していけるようにしたい