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TDのCDP本の書評 - ビジネスユーザ向けの新規データプロジェクトの心得本

トレジャーデータがビッグデータプラットフォームからカスタマープラットフォームへの方向転換をして約4年が経ちました。 様々なお客さまのCDPプロジェクトを主導するカスタマーサクセスチームとプロフェッショナルチームが中心となり、成功ノウハウをまとめたCDP本がついにリリースされました!

個人的にも出版されるのを楽しみにしていたので、今回はCDP本を読んだ感想を書いていきたいと思います。

Disclaimer

私はトレジャーデータ社員のため、書籍に書いてないことへの理解なども含めての感想になっている可能性があります。 なるべく一読者としての感想に努めていますが、何らかのバイアスがあるものとして参照ください。

概要

この書籍は、CDPの実装を有償で行うトレジャーデータ のプロフェッショナルチームのメンバーと、顧客とのポストセールスのリレーションを担うカスタマーサクセスチームのメンバーで執筆されています。彼らが経験してきた様々なエンタープライズのCDPのプロジェクトを通して得られた知見を体系化し汎用化した内容になっています。

また、実際の企業の事例を通じてCDP活用の成功事例とその背後にある要因を解説していて、人材の適材適所、プロジェクトマネジメント、組織構造などの重要な要素がCDP活用の成功にどのように関連しているのかを学ぶことができ、CDP導入に向けた具体的なアイデアを得ることができます。

三章構成になっており、第一章ではプロジェクトにおける人材と組織、二章ではプロジェクトにおける成功のポイント、三章では実際のプロジェクトの進め方が紹介されています。

全体の感想

まず初めにこの書籍の内容は、トレジャーデータのCDP本といっても、8割はトレジャーデータやCDPに限った話ではないと思います。CDPが顧客データを扱うゆえに、データマネジメントやデータ分析を企業が取り組む時に発生するさまざまな課題を解決するための指針が語られています。そのため、自社で新しくデータ活用を始めよう!という時にもこの書籍が大きく役に立つと思います。

それは、CDPのように全社のデータを扱うような取り組みが行われる場合、社内の多くの部門との間でさまざまな衝突が発生し、その中で成功に導くためには、小さな成功(Quick Win)を実現していくことや、プロジェクトの目的がブレないようにするためのプラクティスが必要であり、そのためのエッセンスがこの書籍には散りばめられているからです。

以前、実践的データ基盤への処方箋という本が出版されていましたが、それがエンジニア向けのデータ基盤の導入や扱い方の本だとするならば、この本はビジネスユーザ向けのデータ基盤の導入の仕方を話しているようにも思います。両方の書籍をチェックしてみるといいかもしれません。

興味深い点・学べる点

一章の組織設計の中で印象に残った点は、「できる」けれども「任せる」という「やらない」組織というフレーズがあります。

最近のスタートアップ系のトレンドだとマーケターがSQLを書けるようになって自分で分析するようになりました!というのが流行っているように思います。しかしここでは、SQLを理解して自分で分析ができるようになったけれども、エンジニアに任せる、というのが重要だと述べている点が興味深いです。自分でできるようになったから自分でやるのではなく、自分でエンジニアの業務を理解できるようになった上でエンジニアに依頼をすることで、効率的にコミュニケーションを図れるようになる組織というのが重要なのかもしれないですね。

個人的にもこの辺りはオペレーション系の部門と話していると思うことで、システムがどう動いているかを理解していないと、何を依頼するにしても正確に伝わらなくて、最終的には自分で全部やった方が早いな・・・っていう気持ちになることがあるので、お互いがお互いの業務領域のことをある程度把握してコミュニケーションするのって重要だなーと常々思う次第ですね。

一章の後半の人材採用の話では、トレジャーデータ のプロフェッショナルサービスを例にどのように人材採用計画を行ったかという話と2社の事例が語られています。 他の章の事例でも共通していた項目として、新しいことを楽しんでチャレンジできる人材や組織を作ることの重要性である、というのが述べられています。エンタープライズ企業では、慣例によってなかなか新しい取り組みができていないことに慣れてしまっているがゆえに、新しいことを失敗を恐れずチャレンジする、というマインドを醸造するのが難しいというの僕自身のTDの経験からすると面白いところです。こうした事例を読んでいると、ペパボさんのやっていき、のっていき。というカルチャーがふと思い出されます。こうした楽しんで色々取り組むマインドとそしてそれを肯定するマインドが新しい取り組みを成功させるコツなのかもしれません。

やっていき、のっていき / The Secret of Leadership and Followership - Speaker Deck

二章では、プロジェクトの体制をどう作るかという話です。CDPのように部門横断の場合には、プロジェクトのタスクフォースをどう組むかによって、そのプロジェクトの成否が決まるといっても過言ではありません。短期的な話だけではなく、長期的に人材をどう育てていくのかの示唆も得られると思います。三章では、データ分析や施策におけるビジネスの要求定義とそれを施策に落とし込んでいくプラクティスが述べられています。自社でデータ分析を始める前にこのあたりの目を通しておくとスムーズにプロジェクトが進められると思います。

最後に

全体を通して2時間程度で読めるし、TDが今こんなことしてんだなーっていうのも伝わると思いますので、軽い感じで読み始めてもらうと良いと思います!